【2022年度最新版】売上高から見た人材業界地図

今年も人材業界各社の通期決算がほぼ出揃いました。昨年に引き続き、各社の売上高・営業利益から人材業界をまとめたレポートをお送りします。

昨年度はこちら。

【2021年度版】売上高から見た人材業界地図

昨年度はコロナ禍の影響を受けて業績を落とした企業が多かった一方で、コロナ特需によりIT人材やBPOなど特定分野で大幅に業績を伸ばした企業もありました。それから1年が経ち、求人動向も落ち着いてきた2022年度は、各社どのような業績となったのでしょうか。ご覧ください。

総合サービス企業

総合人材サービスでは、6社すべてが前年度比で増収増益となりました。

リクルートホールディングスは、売上収益が26.5%増加し、過去最高の2兆8,717億円となりました。背景としては、米国のグローバル人材マッチング市場での採用競争が昨年に引き続き加熱しており、HRテクノロジー事業の売上収益が前年度比103.5%増と大きく伸長したことが挙げられます。新商品やテクノロジー開発、それに伴う人材採用にかかる費用も増加しましたが、売上の伸び率が上回り、営業利益は132.7%増となりました。また日本でも有効求人倍率が回復し、採用ソリューションサービスや派遣スタッフの需要が増加しました。これにより主力の人材派遣事業でも売り上げ収益が15.0%増と好調に伸び、増収増益の着地となっています。

パーソルホールディングスは、コロナ禍からの需要回復を受け、連結売上高は前年度比11.6%増の1兆609億円となりました。中でも主力の人材派遣事業において、収益性の高いBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)領域が増益となったことや、その他すべてのSBUで増益または赤字幅が縮小したことから、営業利益は前年比82%増の481億円となっています。人材紹介・求人メディア事業においても、企業の採用意欲の回復に加え、営業力を強化したことにより増収増益となりました。

パソナグループは昨年から継続して、企業やパブリックセクターからのBPO需要を獲得。人材派遣と人材紹介においても堅調に事業が拡大し、すべてのセグメントで増収となりました。粗利率がやや減少したほか、事業の拡大に伴い販管費が増加したものの、それを上回る増収やオペレーションの効率化によって、営業利益は前年度比10.7%増となっています。

外資系企業3社においても、コロナ禍からの需要回復によって大幅な増収・増益となりました。

求人媒体企業

昨年は新型コロナウイルスの影響により、求人広告出稿の減少や、転職・就活イベントの中止などが相次いだことで求人メディア・人材紹介企業は大きな影響を受けました。2022年度は求人数が徐々に回復し、多くの企業で増収となっています。

クイックでは人材サービス業が業績を牽引し、売上・営業利益ともに過去最高を更新しています。求人メディア「Type」を運営するキャリアデザインセンターはコロナ禍の影響から回復が遅れていたメディア事業・人材紹介業の売り上げを伸ばしたほか、新施策も順調に立ち上がるなどして過去最高の売上高となりました。その他、SNSプラットフォーム「Wantedly」を提供するウォンテッドリーでは営業利益が前年度比202%増、ワンキャリアでは428%増と大幅な増収増益となっています。

増収にともない、攻めの施策を打ち出す企業も見受けられました。ディップは「ディップインセンティブプロジェクト」や「バイトルPRO」の認知向上のため、先行投資として大規模な広告宣伝を実施。そのため減益となっていますが、業績予想の範囲内に収まりました。スキルマーケット「ココナラ」を運営するココナラも、テレビCMなどの積極的なマーケティング施策を打ち出し、営業利益は5億円の赤字で着地となりました。

一方で、領域によっては回復がやや遅れている企業もあるようです。リブセンスは増収を確保しましたが通年でコロナ禍の影響を受け、営業損益は横ばいとなりました。黒字体質への再転換のため、「転職ナビ」の撤退を決定しています。飲食業界特化のクックビズは、緊急事態宣言の解除によって赤字幅を昨年の半分に縮小し、緩やかな回復傾向を見せています。

人材派遣サービス企業

派遣業界では、求人ニーズの回復にともない多くの企業が派遣スタッフの採用を強化しました。また派遣スタッフの稼働率も向上したことから、増収増益となった企業が多く見受けられます。中でも好調だったのが技術者派遣と事務派遣で、この2つの領域はコロナ禍の中でも需要が拡大した領域だったといえます。

一方で苦しい戦いとなっているのが製造派遣です。日総工産では、半導体不足や部品不足により稼働が減少し粗利率が低下。人材ニーズは堅調なため採用投資を継続したこともあり増収減益での着地となりました。nmsホールディングスでは半導体不足に加え、海外進出先である中国やASEANなどでロックダウンが断続的に行われ、顧客の稼働停止や停滞の影響を受けました。そんな中、アウトソーシングはeコマース物流向け派遣や米軍施設向け事業、ファシリティ関連事業など好調な事業により穴埋めを行い、過去最高の売上高を更新しています。

その他、昨年から引き続きクリエイティブ関連領域が好調です。クリーク・アンド・リバー社とコンフィデンスはともに過去最高の業績となっています。

まとめ

人材業界の2022年度は、コロナ禍からの回復と成長が見られる1年となりました。求人数の回復に加え、IT系人材やアウトソーシングなどの需要増にうまく対応した企業は業績を伸ばしました。売上の増加にともない、人材獲得や認知拡大のための投資を行った企業も多く見られました。

その一方で、飲食業や製造業などではいまだにコロナ禍の影響が続いています。需要は時間の経過とともに徐々に回復してきていますが、完全にコロナ前の水準に戻るには時間がかかりそうです。既存事業の継続やコストカット、好調な領域への参入など現状を打破する各社の対応が来期の明暗を分けそうです。

次の1年はどんな人材業界地図となるのか、来年度も引き続き注目していきます。

データ引用元

・総合サービス企業
リクルートホールディングス決算短信
パーソルホールディングス決算短信
パソナグループ決算短信
アデコ 2021年度第4四半期、2021年度通期 収益の勢いは加速、粗利率も堅調
ランスタッド2021年第4四半期及び通期決算発表
マンパワーグループ決算
・求人媒体企業
株式会社マイナビ決算公告第49期
株式会社ネオキャリア会社概要
エン・ジャパン株式会社決算短信
ディップ株式会社2022年2月期 第4四半期及び通期決算説明資料
株式会社エス・エム・エス2022年3月期決算及び会社説明資料
株式会社アイデム会社概要
株式会社クイック2022年3月期決算説明資料
株式会社じげん2022年3月期第4四半期決算説明
株式会社キャリアデザインセンター2022年9月期決算説明資料
株式会社リブセンス2021年12月期決算説明会資料
株式会社学情2021年10月期(第44期)会社説明資料
株式会社アルバイトタイムス2022年2月期通期決算説明資料
株式会社インターワークス2022年3月期決算説明資料
ウォンテッドリー株式会社2022年8月期決算説明
i-plug 2022年3月期決算説明資料
クックビズ株式会社決算説明資料
株式会社アトラエ2022年9月期決算説明資料
株式会社ワンキャリア2021年12月期通期決算説明資料
ビジョナル株式会社2022年7月期通期決算説明資料
株式会社LITALICO 2022年3月期決算説明資料
株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント2021年12月期決算説明資料
株式会社MS-Japan2022年3月期決算補足説明資料
株式会社サーキュレーション2021年7月期通期決算説明資料
株式会社ココナラ2022年8月期通期決算説明資料
株式会社ビザスク2022年2月期通期決算説明資料
・派遣企業
テクノプロ・グループ決算説明資料(2022年6月期)
UTグループ株式会社2022年3月期決算説明資料
株式会社メイテック2022年3月期決算説明資料
株式会社夢真ビーネックスグループ決算説明資料
WDBホールディングス株式会社2022年3月期決算説明資料
株式会社アルプス技研2021年12月期通期決算説明会
株式会社アウトソーシング2021年12月期決算説明資料
株式会社ワールドホールディングス2021年12月期決算説明資料
日総工産株式会社2022年3月期決算説明会資料
nmsホールディングス2022年3月期決算説明資料
株式会社ウィルグループ2022年3月期決算説明会
ライク株式会社2022年5月期決算説明資料
株式会社エスプール2021年11月期[第22期]決算説明資料
キャリアリンク株式会社2022年3月期決算説明会資料
株式会社フルキャストホールディングス2021年12月期決算説明資料
株式会社ソラスト2021年度決算説明資料
株式会社クリーク・アンド・リバー社決算短信
株式会社コンフィデンス2022年3月期通期決算説明資料