【先端テクノロジー人材採用#03】これからの採用マッチングは「条件からの脱却」。社会課題でつながる採用支援とは?

母集団は築けない。先端・専門テクノロジー領域の人材採用特集

AIやVR/AR、アバター、ドローン、Fintechという今話題のキーワード。最先端テクノロジーをメディアで見る機会は多くなりましたが、採用マーケットにおいてその経験者はほぼいないでしょう。母集団を作ることが難しい状況で企業はどのように採用していけばいいのでしょうか。本特集では、先端・専門領域の採用にフォーカスし、実情を掘り下げていきます。

母集団形成での採用が困難な「先端・専門領域」のエンジニアや研究職。これから、どんどん新しいテクノロジーから事業が生まれてくる中、提案内容が確立できていない人材営業の方が多いのではないでしょうか?

今回は専門領域人材の採用に特化しているアスタミューゼ社の独自の考え方を特集し、人事採用担当者様や、営業の皆さんの新しいアプローチポイントを考えていきます。

テクノロジーの進化と、採用マーケットの進化を考える


※アスタミューゼ株式会社の分析資料を引用

アスタミューゼ社のDB分析により整理された世界の「AI技術領域」の特許出願件数推移。これを見ると、米国と中国において、幾何学的な成長率で技術開発と特許出願がされていることが分かります。

テクノロジーの進化は、私たちの生活圏に入って来る前に、研究フェーズや技術開発フェーズ、技術権利化フェーズを分析することで認識できるそうです。グラフからは、米国では2000年初期からAI技術が確立されてきており、中国では2010年を過ぎてから圧倒的な開発力を発揮していることが分かります。
そしていま、AI技術が様々な産業や生活に取り入れられてきている状況です。

アスタミューゼ社では、テクノロジーはどんどん進化してはいるものの、そのテクノロジーを生み出すヒトの採用領域では実は大きな変化がないと考えており、マスを対象にした母集団形成をし、応募~書類選考~一次面接~最終面接と、KPIを逆算した採用を行なっていることが今後、大きな課題になると言います。

また、優秀人材の定義もヒトの採用領域では大きな進化がないと話しており、「大卒」「募集対象35歳以下」「転職回数3回以内」これは本当に優秀人材の定義なのかということも、これからの「少子化・超高齢化社会」「働き方の多様化」となる未来に向け、いま一度考えて行く必要がある課題だと危惧しています。

GAFAは既に取り組んでいる採用PRのメッセージとは

HRogでもピックアップしたこともある「採用に成功している」「多くの人が憧れる」企業の代表として「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」がありますが、大卒資格が不要だったり、給与は採用時に自分で決めるスタイルだったり、日本企業の採用とは大きく異なる点が多々存在します。

組織の生存目的、ビジョンやミッションというブランドが個社別にできており、それが社内だけでなく、求職者にも届いているという点が特徴的です。情熱的で、社会をよりよくしようという高い志を持ち、使命感を持って日々の仕事に取り組んでいる企業(集団)です。

書籍にも多々描かれていますが「自分たちが何に挑戦しているのかが一人一人明確になっている組織」だから強いのです。GAFAが発信しているメッセージとは、社会存在意義や挑戦していること、自分たちの社会貢献度であって、雇用条件ではありません。

アスタミューゼ社では、GAFAに代表されるように「志の高い人材へアプローチする為にどんなメッセージを発信すべきか」を研究した結果、独自に「挑戦したい社会課題100」を定義し、実現したい未来を明確にし、社会課題に挑戦している企業と、挑戦したい求職者をつなぐ採用PRのメッセージを軸としているそうです。

挑戦したい社会課題一覧

  • 副作用・重症化のない社会を実現する
  • マラリア(三大感染病)のない社会を実現する
  • 依存症・中毒のない社会を実現する
  • 脳卒中(5大疾病)のない社会を実現する
  • 廃棄食料のない社会を実現する
  • 生態系をまもる社会を実現する

など

未来を創るために解決すべき、世界中のあらゆる課題(issue)をastamuse独自の切り口で編集、現在のトレンド、未来に向けた変化への兆し、取り組む企業等を掲載しています。続きはコチラ >> https://astamuse.com/ja/issue/

国連「SDGs」と、アスタミューゼ社が独自に定義する「挑戦したい社会課題」

ご存じの方も多いと思いますが、持続可能な開発目標「Sustainable Development Goals」は、17のグローバル目標と169のターゲットからなる国連の開発目標です。

※国連広報センターよりSDGsロゴ引用

SDGsが定める17の目標(国際連合広報センター)

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

国連が定めるだけあり、共感はできるものの自分ゴト化するには十分な学習が必要そうですね……。

アスタミューゼ社が定義している社会課題は、グローバルではなく先進国向けの課題設定で、かつビジネスで解決可能なものが中心の構成となっています。確かに、国際協力や法の整備等がなくても挑戦できそうなビジネス課題が多数あります。

「社会課題といえばボランティアやNPO法人だろう」という安易な考え方は改めていかないと、人材の採用は厳しくなりそうです。現に、先端技術スタートアップに注目していると「○○を解決したい」といったメッセージが多いです。

補足:技術開発者は意外とアレルギーのない「課題解決」

取材の中で「そうなんだ」と思ったことの補足として、特許の出願明細書に「この技術が解決する課題」というものを記載しないといけないと知りました。特許は「課題を解決するための手段を創造したことが発明」であり、単なる権利でも技術でもないということです。

確かに、事業やサービスも「何かしらの課題を解決する為に存続している」と考えると、技術系人材の採用アプローチメッセージとして有効かもしれません。

まとめ:採用戦略と、企業・事業戦略を線でつなぐこと

GAFAの例にもあるように「採用の為の採用戦略」ではなく「事業戦略を推進するための採用」であり、事業推進と採用が線でつながると多くの人に事業内容が伝わります。事業内容とは「その事業を通して社会にどんな影響を与えるのか」です。

グローバルに採用展開していれば、SDGsは活用できそうです。日本国内での採用ならば、アスタミューゼ社のような課題粒度も良いと思います。いずれの場合も条件を前面に出した採用PRでは先端・専門領域人材の確保は難しいでしょう。

各企業の中期経営計画には、多くのヒントが隠されてそうですね。

次回は、専門・先端領域の「ものづくり技術人材」を輩出している「大学院」「大学」「高専」をランキング形式でご紹介します。アスタミューゼ社が運用している300サイト超の転職サイト「アスタミューゼ転職ナビ」の分析結果を見ていきましょう。

(HRog編集部)