株式会社i-plug
代表取締役 CEO
中野智哉
なかの・ともや/1978年兵庫県生まれ。 2001年中京大学経営学部経営学科卒業。2012年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。株式会社インテリジェンス(現パーソルグループ)で10年間求人広告市場で法人営業を経験。2012年4月18日に株式会社i-plugを設立し、代表取締役CEOに就任。
現在、新卒採用における採用手法は大きな広がりを見せています。従来のナビサイトのみにとどまらず、ダイレクトリクルーティングやインターンシップ、SNS採用、求人検索エンジンなど、企業・学生ともに選択肢が多様化しています。本特集では新卒採用サービスを提供する各社に話を聞き、新卒マーケットの今とこれからのトレンドを紐解きます。
新型コロナの影響で採用のオンライン化が進む昨今、オンライン採用と相性のよいツールとしてダイレクトリクルーティングサービスに注目が集まっている。今回は、企業が学生にアプローチするダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を提供する株式会社i-plugの中野氏に、コロナ禍におけるダイレクトリクルーティングのメリットや活用方法について話を聞いた。
21卒採用では「1to1コミュニケーション」が重要に
中野氏によると、コロナ禍の21卒採用ではオンライン選考が主流となる中、候補者の見極めがしづらいなど、Webでのコミュニケーションに課題を抱える企業が増えたという。
「新型コロナの流行により、学生にとってもWeb就活が当たり前になりました。一方企業側は、選考フローの中でも特にオンライン面接の場面で課題を感じる傾向が見られました。特に1対多数のコミュニケーション、つまり集団面接を実施しにくいと感じている企業様が増えているようです。これを受けて、一人ひとりの話を深ぼれる個人面接が主流になりました。
加えて、最近は採用CX(候補者体験)や、採用DXの文脈もより盛り上がりを見せています。今後は学生視点から『一人ひとりとのコミュニケーションをどう改善していくか』という視点で新卒採用サービスを選ぶ企業も増えていくのではないでしょうか」
コロナ禍でのダイレクトリクルーティングは、相性を見極める手法としても有効
『OfferBox』では、オンライン就活が盛り上がる以前から1to1コミュニケーションの重要性を発信してきたという。21卒以降、ダイレクトリクルーティングはどのような位置づけとなっていっているのだろうか。
「ダイレクトリクルーティングは一個人へ向けて強いメッセージを伝えることが可能なツールです。そのため昨今の潮流である1to1コミュニケーションでの採用を実現するのにぴったりなツールだと考えています」
また『OfferBox』の特徴の一つとして、学生・企業ともにオファーの量に制限を設けている点がある。
「企業は採用予定人数ごとに、送付できるオファー通数が変わります。一方、学生側はオファーが送られて来た際に『承認する』か『承認しない』かを選ぶことができます。承認しなければそこで終わり、承認すると選考に進む流れです。学生側の制限としては、選考に進むきっかけとなる『承認する数』で、最大15枠までを可能としています」
オファーに制限をつける背景には、どのような考えがあるのだろうか。
「まず、就活生への『選考に進む企業は真剣に選び、コミュニケーションを密にとってほしい』という想いがあります。人間が同時にとれるコミュニケーション量には上限があるので、オファーをすべて承認していると、学生自身にも負荷がかかりますよね。そうすると、企業と自分との相性の見極めが難しくなることが危惧されます。
企業に対しては『とりあえず数を打つ』というコミュニケーションをなくしてほしいという考えがあります。数を重視したスタイルでは、必要以上に工数がかかったり、オファー文が紋切り型の文章になったりすることが予想されます。効果的な1to1コミュニケーションとして、オファー文は学生ごとに変えることを推奨しており、オファーを数打つ時間ではなく、じっくりと相性を見極めることに時間を割いてほしいという思いがあります」
そのような中、新型コロナの影響で採用説明会が相次いで中止になったことをきっかけに、今までオフラインでの説明会やイベントなどをメインに新卒採用を行っていた企業の利用が増えたという。
「採用イベントの中止が余儀なくされ、1to1のコミュニケーションの大切さに気づいた企業も増加したと感じます。従来の採用手法では応募がこなかった層の学生に向けてアプローチができ、ターゲットの学生を1本釣りの形で採用できるダイレクトリクルーティングに注目が集まりました。
その結果、現在はtoB企業やエリアを超えて採用したい企業、一般的に持たれる会社のイメージとターゲットが違い、必要な人材が採用できていない企業など、多様な業種の企業が利用しています」
単に採用人数を集めるという観点ではなく、他のサービスでは出会えない学生と出会える、かつそれぞれの学生に合わせた採用CXを設計できるという観点からも利用する企業が増えているようだ。
人工知能を通じて企業と学生のマッチング精度を向上
コロナ禍の採用活動が続くと予想される2022年新卒採用。今後ダイレクトリクルーティングサービスとして、どのようなことに取り組んでいくのだろうか。
「OfferBoxは、企業の新卒採用におけるミスマッチを解消することを目的にスタートしたサービスです。そのポリシーは今でも変わっておらず、人工知能を通じて学生や企業の行動データ(内定承諾先・オファー承認先・オファー送付先など)を分析し、閲覧する学生の検索順位を企業ごと最適化する仕組みも構築してきました。
しかしミスマッチ解消のためには、学生・企業双方の相互理解も欠かせません。相互理解のためにはより深いコミュニケーションが必要となるため、今後も一人ひとりとの密なコミュニケーションを推奨し、さらなるマッチング精度の向上を目指していきたいと思います。その中で、学生や企業に向けてより良い価値を提供していきたいです」