株式会社採用モンスター
代表取締役社長
鴛海 敬子 氏
おしうみ・けいこ/前職株式会社MapleSystems CHROとして1年間で約70名のエンジニア採用を実現。 退職後、採用コンサルタントとして IT業界からエステ業界まで幅広く手がけ、スキルシェアした自身の経験を元に、2019年8月より組織や採用に課題を感じている企業とHRのプロがマッチングするサービス”採用モンスターズ”をスタート。2019年10月株式会社採用モンスターを創業。代表取締役に就く。Twitterで副業プロ人事を200人集め、人事に困っている企業からの仕事の依頼を多数受け、「人事で組織を元気にする」をミッションにサービスを推進している。
政府が働き方改革の一環として副業を推進、大企業でも副業解禁が進むなど、副業マーケットが徐々に広がりを見せています。また、新型コロナウイルスの影響でリモートワークの体制が整い、個人が副業をはじめるハードルも下がっています。副業がより一般的なものとなりつつある中、今後企業と個人の関係性はどのように変化し、採用のあり方はどのように変わっていくのでしょうか?本特集では変化の只中にある副業マーケットを追います。
今回は、人事と広報に特化したスキルシェアサービス『採用モンスターズ』を運営する株式会社採用モンスターの鴛海氏にインタビューをおこなった。現在もITベンチャー企業のエンジニア採用などに携わる同氏に、人事領域での副業社員導入の利点について聞いた。
※取材はオンラインでおこなった。写真は株式会社採用モンスター提供。
企業が人事組織強化でぶつかる壁
オウンドメディアリクルーティングの普及に伴い、企業人事の関心は「どの採用ツールを利用して採用をおこなうか」から「どのようにして自社の採用力を高めていくか」に変化してきている。しかし採用組織の立ち上げや強化プロジェクトを立ち上げても、実際にはうまくいかないことが多い。いったい、なぜなのだろうか。
「人事は長年の経験がものをいう世界です。採用ペルソナの言語化に始まり、採用戦略の描き方、求職者対応の細かなノウハウ、反応をもらえるスカウトメールの書き方など、採用業務の一つ一つに細かなテクニックがあります」
しかし人事経験者がおらず、そのようなテクニックがあることも知らないチームだと、今までの自身の就職・転職活動の経験を元に、勘に頼った業務設計をおこないがちだという。
「その結果、場当たり的な採用活動をおこなってしまいミスマッチが起こってしまうケースが散見されます」
「また採用もトレンドがあり、数年前に勝ちパターンだったやり方が今も勝ちパターンになるとは限りません。かつて採用業務をおこなったことがあるものの、しばらくは採用から離れていた方の中には、採用に関する知識がアップデート出来ていない方もいらっしゃいます。だからこそ、現在進行形で人事業務に携っている人の知見が必要になってくると考えています」
ここ数年を振り返ってみても、クチコミサイトや求人検索エンジンの台頭、リファラル採用や採用広報というキーワードの登場に現れるようにオウンドメディア・SNSの存在も無視できなくなってきた。たしかに久しぶりの採用となると「今の採用」を知っておかなければ、自社にフィットした選択肢を選べないリスクもある。
副業人事と伴走して組織にナレッジをためる
株式会社採用モンスターでは「副業プロ人事」と企業をつなぐプラットフォーム『採用モンスターズ』を提供している。実際に他社の人事として成果を出している人が顧問として入り、採用成功にコミットしてもらいながら人事組織の開発をサポートするサービスだ。
「『採用モンスターズ』を利用されている企業様の中には、今まで人事の経験者が社内におらず、何が正しいやり方かわからないまま人事周りを推進していったという会社もあります。そしてトライ&エラーを繰り返しているもののなかなかうまくいかない、というタイミングでお声がけいただくことも多いです」
実際に本業で人事をしている人を副業社員として迎え入れるメリットについて鴛海氏は「的確なアドバイスと実践を通して、自社の採用力強化をサポートできることが最大のメリット」と語る。
「RPOなどを利用する場合、短期的には目の前の採用推進につながるものの、他社に採用の機能をお任せすることになるので、長期的な自社の採用力強化につながらないという側面があります。また面接のやり方などを含めた人事スキルは、採用コンサルタントによる口頭のアドバイスだけではなく、実際にやっている姿を見てもらうことが一番の学びになる部分も多いです」
「採用モンスターズでは本業でしっかり成果を出している『プロ人事』が、実際に人事組織の中に入り、採用コンセプトの言語化やペルソナ設計といった採用の上流部分の設計から、納得感のある面接をおこなうためのヒアリングシートの作成・内定出しのやり方などまでフォローします。新米人事の方にプロ人事のノウハウを間近で学んでもらい、社内の資産として残してもらいたいと思っています」
また採用フェーズだけではなく、組織のブランディングやカルチャーの醸成といった課題もサポートしている。
「実際に評価制度が今までなかった企業様へ向けて、ティール組織として組織が加速するような評価制度を策定した事例もあります。離職率の改善や組織エンゲージメントの向上なども含めて、人事が抱えがちな悩みに対して『課題の解決』と『ナレッジの蓄積』両面からアプローチできればと思っています」
「社外人事」を前提とする新しい組織の形
鴛海氏によると、社外人事を人事組織の中に組み込むメリットは他にもあるという。
「社外の人材だからこそ、社内の人間にはなかなか見えづらい自社の魅力や課題が抽出されやすくなります。また第三者が入ることにより、言いづらいことも含めて感情的にならずにスマートに意見交換ができるようになるため、課題解決に向けて意見がまとまりやすいというメリットもあります。社外人事を人事組織に導入することで、自社だけでは解決できない課題や魅力を整理し、効果的な採用活動ができるようになります」
第三者の客観的な視点が入ることにより、より建設的な議論がしやすくなることも社外人事を取り入れるメリットのようだ。
「まだまだ人事は内製化するイメージが根強いとは思いますが、経験がない担当者が感覚に頼りながら人事業務に取り組むばかりだと、失敗が続いて組織はどんどん疲弊していってしまいます。『良い組織を作っていきたければ、社外のプロに頼む』という感覚を当たり前にしていくことで、良い会社を増やし、イキイキ働く人を増やしていきたいと思います」
組織は企業の要。だからこそ、人事組織の立ち上げ期は人事経験があるメンバーの意見を取り入れながら基盤を作る必要がある。もしも社内にそのようなメンバーがいない場合、社外からプロフェッショナルの力を借りて社内にナレッジをためていくという考え方はこれから一般的になりそうだ。